Dimension W / 岩原裕二
◆あらすじ
“コイル”を通じて、第四の次元「W」から無限の電気エネルギーを供給できるようになった世界。コイル嫌いな元軍人の主人公マブチは、“ナンバーズ”と呼ばれる強力なコイルを破壊するべく、様々な事件に関わっていく。
マブチと行動を共にすることになる謎のロボット・ミラは、コイル研究の第一人者により作成され、人間に限りなく近い感情を持つ。
ナンバーズの秘密は?
ナンバーズとミラとの関係は?
次元Wとは何なのか?
近未来冒険活劇!!
◆見所
①世界観
岩原先生の過去作品「いばらの王」でも感じましたが、やはり世界観の作り込みがすごいです。物語が進行しても初見で感じた世界観が崩れないため、一巻に戻って読みなおしても違和感がありません。巻数を重ねるにつれて世界観(=作風)が変わっていくのもそれはそれで面白いのですが、“最初から当たり前にそこにある世界”として描かれる物語の説得力は半端ないです。
②クライマックスへ加速する感覚
四巻では、“霧の亡霊”事件に決着がつきます。事件の種明かしやそこに至る話の構成の完成度の高さもさることながら、クライマックスへ向けて物語を加速させるテクニックに特筆すべき点があると感じました。
主人公一行が決戦の場所へ赴くにあたり、登場人物が伏線を設置、または回収しながら舞台を下りて行きます。
そこまでは複数のキャラクターが並行して行動しており、読者は複数視点で物語を追っていました。クライマックスを前にキャラクターが舞台を下りることで、フォーカスがメインのキャラクターに定まり、最終決戦に集中して物語にのめり込むことができます。
脇役達の解散は決戦後に描かれることが多いように思いますが、決戦前に描かれることで、上記のような盛り上げ効果を感じられました。
また、脇役達が各々の思惑を持ち、事件の展開に見切りをつけて撤退する様子からは、物語の広がりを感じました。
◆まとめ
完成された世界観が魅力の岩原先生の作品ですが、それに加えて、Dimension W 第四巻では物語の盛り上げ技術もパワーアップした感があります。
今までも岩原先生の作品は物語の骨子がしっかりいるので、本作もそれぞれの伏線をしっかり回収し、構造的に美しい終わり方をしてくれる期待大です。次巻も楽しみに待ちたいと思います。